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結果としての「名作」 [Archives]

    

デンマークの新聞が掲載した「ムハンマドの風刺画」を
めぐって、世界中が大騒ぎになってる。

    

確かに風刺画自体のセンスは悪い。
この絵からは、このご時世、誰でも容易に思いつく
「イスラム=テロリスト」って図式しかイメージできない。
直截的でヒネリがねえから面白みのカケラもねえのだ。
チンコとかマンコ描いて喜んでるガキの下ネタと同じ。

同じ風刺画でも、フランスのLe Mondeの方がまだ
シャレが効いてる。

「私はムハンマドを描いてはいけない…」って文字を
書き連ねて「ムハンマドらしきモノ」を描いてる。
漫画でも文章でも何でもそうだけど、風刺ってのは
「隠された意味」が楽しめなきゃダメなのだ。

ただし、いかに問題の風刺画がクソであろうとも、
責められるべくはアートとしてのクソさ加減だけで、
「ムハンマドを描いた」コトを非難するのは筋違い。
てゆーか、結果としては逆効果だ。

    

まずイスラム教は「偶像崇拝を禁止」するコトで、
言い換えるとキリスト教の「十字架上のイエス」や
「聖母マリア」みてえな絵ヅラとしてのシンボルを
捨てるコトで、純粋に教えを信じろと説いている。

「観念だけで信仰を保つ」って、かなり難しいぞ。
神学的には、キリスト教よりも遙かに高等だ。

しかし、逆にこれが信仰の前提だとするならば
イスラム教徒は「ムハンマド」のヴィジョンとして
の共通のイメージは持ってないコトになる。

「神聖な肖像画を冒涜した」ならまだわかる。
それが「持ってないヴィジョンを傷つけられた」
ってなると、形而上学的でかなりややこしい。

「持ってないモノを傷つけられた」苦痛って
果たして謝罪の対象となりうるのだろうか?

それ以前に「純粋な教義だけ重んじろ」と
ヴィジョンとしての偶像の崇拝を禁止する
高度な教義を実践してるハズの人たちが、
元から存在しないヴィジョンを想像した上に
それを冒涜されたと怒ってる。

それは本来の教義の主旨に則って考えると
「思い描くコトさえも禁じられている偶像」を
心の拠り所にしてるワケで、逆に不心得者の
怒りってコトの証明じゃねーのか?

そもそも教義上、ムハンマドが「描き得ない」
のならば、逆に言うと描かれた時点でそれは
「ムハンマド」じゃないって解釈もあるのでは?

まぁその辺は百歩譲ったとしてもだな、
イスラム教の「偶像崇拝の禁止」は、信徒に
のみ適用されうるローカルルールであって、
異教徒は対象外のハズ。

未だに偶像を礼拝して悦に入ってるアホな
キリスト教徒の描いた似顔絵なんか、シカト
しときゃ済む話なのだ。

だいたい宗教の成立当初ならまだしも、
今やイスラム教は「世界三大宗教」の1つだ。
異教徒に対しての寛容さも要求される。

異教徒との対立の火種になりかねない
古くさいルールはとっとと捨て去って、
すぐに教義をアップデートすべきなのに
一向にそれが行われる気配はない。

よくよく考えれば「偶像崇拝の禁止」って
それ以前から存在した、偶像を崇拝する
異教の弾圧に使われた教義だ。

    

今もその名残があるからこそタリバンが
バーミヤンの石仏を爆破もするワケで。

つまり「偶像崇拝の禁止」ってルールに
「偶像よりも純粋に教えを重んじる為」
とかいくら理屈コネ回してみたところで
単なる後付けに過ぎない。
かなりご都合主義的な言い訳なのだ。

    

そして今回の騒ぎに関しても「信仰心」
は殆ど後付け。ホントの怒りの根源は
「貧困」とか「格差」とか、西洋諸国に
対してイスラム社会が抱えるどーにも
やり場のない不満だ。

その意味で言うと、回り回った末に
実は問題の風刺画は、この大騒動に
よって「ホントの風刺」になっちまった。

    

信仰を司るハズのアタマの中にある
直情径行的な怒りに火がついて爆発…
余りにも単純かつ最小限の表現で、
事件の本質が暗示されてるように
見えてくるのが、これまた不思議。

全くヒネリのない駄作がイスラム教徒の
怒りを掻き立てるコトで、そこに描かれた
構図が現実化し、「歴史に残る風刺画」
になっちまったのだ。

これほどの皮肉があるだろうか?
「宗教」って一体何?
「信仰心」って一体何?

どーやら「悪魔」だけじゃなく「神様」も
人間をトチ狂った行動に駆り立てるらしい。

そんな数々の問題を提起したって点で
この風刺画は存在意義のある「名作」
ではないかと、敢えて言ってみる。


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