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Reminder #2: 「奥山貴宏」という神話 [Archives]

腰痛でブログをかまけていた今日この頃。
そこへ来て、新たな「宿題」が出された。

でもひと夏かけても、この宿題は終わらない。
なぜなら「終えてはならない宿題」だからだ。

33歳ガン漂流ラスト・イグジット

33歳ガン漂流ラスト・イグジット

  • 作者: 奥山 貴宏
  • 出版社/メーカー: 牧野出版
  • 発売日: 2005/07
  • メディア: 単行本


彼はもうこの世にいないけど、それで終わりじゃないのだ。

奥山貴宏が「忘れるな」と語りかけている。

まぁ俺にできるのは出版記念の本の宣伝ぐらい。
しかもまた返事の来ない手紙になっちまうけど、とりあえず
彼のブログにトラックバックはしておこう。

彼については前にも何度か書いてるのだが
今だから言うと、正直、奥山氏の文章自体は好みじゃない。
とは言いつつ、彼の本はそんな俺までも、なぜか最後まで
一気に読ませてしまうパワーがある。
この「得体の知れないパワー」は一体何なんだろ?

『ジェネジャン!!』で話した時だったか?
それともブログだったか?彼はこう話してた。

    

「エピソード3は見ておきたい」

4ヶ月前にタイムリミットが来ちまったから
その夢は叶わなかったんだけど
彼がこの映画を心待ちにしていたのは
何となくわかる気がする。

もしかすると彼の本には
『スターウォーズ』で言うところの
「フォース」が秘められているのではないか?

…なんて思ったりしたのは
ちょうど最近、この本を読み終えたから。

     

アメリカの比較神話学者ジョセフ・キャンベルの
『千の顔をもつ英雄』だ。
(Joseph Campbell“The Hero With A Thousand Faces”1949)

ジョージ・ルーカスは『スターウォーズ』を作る時
この本からインスピレーションを得たという。

   

キャンベルはギリシア神話や聖書、仏教は勿論
アメリカ、インド、ポリネシアから日本の神話まで
世界各地に残る神話は全て、共通する普遍的テーマ
を物語っているという。

確かに『スターウォーズ』にはキャンベルの言う
神話の要素がそのまま組み込まれてる。

モノすごくかいつまんで言うと…
①「英雄」が「召命」を受けて「冒険」に旅立ち…
②それは誰も挑んだ事のない「命がけの冒険」で…
③時に「英雄」は悲劇的な死を迎えたりもするが…
④それが英雄の帰属する社会に恩恵をもたらす

…みたいな。ホントはもっと細かく分析されてて
『スターウォーズ』で言うと…

  

ダースベーダーとルークの親子関係が
キャンベルが言うところの「選ばれし英雄」の
「父親との葛藤=一体化」みたいなプロセス
だったりするのだが。

キリストでも仏陀でもルーク・スカイウォーカーでも
神話の中の「英雄」はそれまで誰も挑まなかった
「冒険的な人生」を全うし、社会に変革をもたらす。

実はそれは、姿形を変え、時代を超えて現れる
同一人物=「千の顔をもつ英雄」ではないのか?

それぞれの神話は幾千幾万の違ったストーリーに
見えるけど、訴えてる「真理」はただ1つ。

「冒険」によって精神的な成長を遂げることが
よりよい人生の道しるべなのだと教え諭すことで
人々の内面的成長を促し、心の支えとなるコトが
本来あるべき「神話」の役割ではなかったのか?
…ってのがキャンベルの主張なのだ。

奥山氏が『スターウォーズ』を好きだったってのも
こう説明されると、何となくわかる気がする。

「英雄」が未知なる力を授かり、命がけの「冒険」
に足を踏み入れ、栄光を掴むのだ。
ガンと闘う彼には励みになったに違いない。

さらに言うと「自分の死をネタにする」という
奥山氏の試みは、自分が直面している「死」を
何かと避けて済まそうとしがちな今の社会に
風穴を開けてやれ!的な、彼にとっての「冒険」
だったのか?みたいにも、俺にはダブって見えた。

多分、読者の多くが奥山氏に共感するのも
そんな彼の生き様から「神話の英雄」的モチーフを
無意識に感じ取るからだと思うのだ。

さらにここから、キャンベルは論を進める。

かつて人間にとって「精神的な成長」を促し、
「心の支え」として機能したハズの「神話」が
現代人にはもはや信じる対象とはなりえない。
単なる「作り話」になっちまってる。

現代人が方向性を見失い、不安を抱えてるのも
そんな「神話の喪失」が原因だと言うのだ。

確かに信じるモノがないってのは悲惨だ。
逆に信じるモノを持ってる人間は強い。

実を言うと俺も最近、それを実感させられる
光景に出くわした。

腰痛の治療で病院に通い始めたのだが
初診に行ってみたら待合室が大混雑だった。

俺は時間つぶしに『千の顔をもつ英雄』を
読んでたのだが、近くで順番を待ってる患者も
食い入るように本を読んでるのが気になった。

横目で覗くと、読んでたのはこんな感じの本。

 

見ると待合室の横は『丸山ワクチン』の処方
受付だった。周りはみんなガン患者。そりゃ真剣だ。

〝末期ガン患者の最後の望みの綱〟の
異名を取る『丸山ワクチン』だが、その効果
については賛否両論あって、厚生労働省の
認可が得られていないのも事実だ。

俺には本を読んでたその患者が、まるで
その効果を自分に信じ込ませようとしてる
かのようにも見えた。

一方で、横にいた別の患者も何かの資料
を一生懸命読んでる。覗いてみると…

 

輸血拒否でおなじみ『エホバの証人』こと
『ものみの塔』の会報だ。かなり引いた。

とは言いつつ、ワラにもすがりたいガン患者には
救いが必要なのも事実だ。未承認ワクチンでも
新興宗教でも、信じることで奇跡をもたらして
くれる「神話」が必要なのだ。

そう考えると、そもそも『丸山ワクチン』自体
ある意味「神話」なのかも知れない。

いわゆる「病は気から」の反対で
「ガンに効く」と信じることが患者の免疫力
を高めるプラシーボ効果をもたらしてるだけ
じゃねーか?とも思えてしまうのだ。

でも医学的メカニズム自体は問題じゃない。
ともかく信じることが人間を強くするのだから。

それで言うと、ふとこんな思いが頭をよぎる。

ガンと闘うんだったら奥山氏の本を読めば
効果があるんじゃねーのかな?

彼の本には読む者を力づける「フォース」がある。
事実、彼は医師の宣告より長く生きながらえた。
「特効薬」になると思うのだ。

そーなりゃ『スターウォーズ』なんか目じゃない。
まさにガン患者にとっての「現代の神話」だ。
『エピソード3』見れなくても充分オツリが来るぞ。

もっとも「神話」ってのは、多くの人々の心に強く
焼き付けられて、初めて成立するものだ。
その可能性については何とも言えない。
テレビ見て泣いてた奴だって、数ヶ月もすれば
きれいサッパリ忘れちまうのだから。

とは言え、そこは楽観的に彼が「現代の神話」に
なれるコトを「信じて」、この言葉を贈るとする。

    

“May The Force Be With You”
「フォース」が汝と共にあられますように。


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